過払金の返還請求
1 過払金とは
過払金とは,制限利息を超えて利息を支払い,その結果,元金がゼロとなったことで,払いすぎになった利息が戻ってくるものをいいます。
通常の取引をしていれば,7年くらいで元金がゼロになると言われています。
2 過払金の発生のシステム
(1)グレーゾーン金利
法律で認められている利息の率は,利息制限法という法律で,年18%(100万円以下の場合)と定められています。しかし,利息制限法は,制限利息に違反した場合の罰則を定めていませんでした。罰則があるのは,出資法という法律によって,年29.2%以上の利息からだけになっています。
貸金業者としては,違法であっても,罰則が無いのであれば,当然そのぎりぎりの金利を取ろうと考え,制限利息を遙かに超えた利息で契約をしていました。この18%と29.2%の間の金利がいわゆるグレーゾーン金利です。
(2)利息の元金への充当
では,グレーゾーン金利で金を借り,利息を払った場合,18%を超える分の弁済金はどうなるのでしょうか。裁判所は,原則として,18%を超える金利の支払いは,元金に充当されると判示しました。
つまり,100万円を年29%で借り,1年目は利息だけを29万円支払ったという場合,利息として認められるのは18万円のみで,残りの11万円は元金に充当され,元金が89万円に減少する,ということが起こります。表面上は,単に利息だけを支払ったように見え,元金は100万円まるまる残っているように見えますが,実は元金を11万円支払っており,元金は89万円になっている,ということになるのです。
(3)具体的な計算
このような取引を続けていくと,
2年目にも利息29万円を支払ったとしたら,
89万円×18%=16万0200円(本来の利息)
29万円−16万0200円=129800円(元金充当額)
よって,元金が76万0200円になります。
3年目にも利息29万円を支払ったとしたら,
76万0200円×18%=13万6836円(本来の利息)
29万円−13万6836円=15万3164円(元金充当額)
よって,元金が60万7036円になります。
3年続けただけで,表面上は元金が100万円残っているとしても,実は元金は約60万円しか残っていないことになります。
これを何年も続けていくと,元金がゼロになる時が来ます。
それでも取引を続けていくと,利息の払いすぎ,つまり,過払金が発生します。
一般的には,7年間取引を続けていると,元金がゼロになると言われています。
3 過払金の調査方法
借金の整理を弁護士に依頼した場合,貸金業者に弁護士が受任した,ということを通知し,その通知の中で,依頼者様との間の今までの取引の履歴の開示を請求します。すると,業者から取引開始時から現在までの取引の明細書が送られてきます。
この取引明細書は,多くの場合,契約書上の金利(グレーゾーン金利である場合が多いでしょう)で記載されています。その明細書を,最初から18%の金利だったとして計算し直します。この計算が終われば,現在の正しい借金の残高が明らかになり,過払金の有無も明らかになります。
過払金の金額が明らかになった後,まずは債権者と過払金の返還の交渉を行います。以前はこの交渉で支払ってくる業者もありましたが,最近は交渉では請求金額の5割程度しか払えません,という業者がほとんどです。そこで,多くの場合には訴訟を行って過払金の回収を行います。
4 過払金請求訴訟
過払金の請求訴訟を提起する場合,依頼者様は裁判所に来ていただく必要はありません。委任状をいただけば,弁護士が代わりに裁判所に出頭し,手続を進めていきます。
ただし,借入の経緯などについて,依頼者様に確認することはありますし,ごくまれに証人として1回法廷に来ていただくこともあるかもしれません。
このようにして訴訟を行い,判決を取ります。判決を取る前に,有利な条件での和解をすることも多くあります。
判決を取った場合には,業者が任意で過払金を支払ってくれれば良いのですが,支払わない場合には,強制執行を行う必要があります。ただ,最近は判決さえとればきちんと支払ってくる業者が多いように思います。
5 弁護士報酬
過払金を回収した場合,回収した過払金の中から弁護士報酬をいただきます。
借金を完済しており,過払金のみの請求の場合には,回収額の20%+消費税,借金がまだ残っていたが,18%で計算し直したら過払金が発生していた,という場合には,借金の減額分の10%+回収額の20%+消費税となります。
これら報酬は,過払金が回収できれば,その中から差し引かせていただきますので,改めて依頼者様からお支払いいただくということはありません。